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兄との再会は 失望に変わり逆転する。
かおるが消えた後にも実は続いていた、用意周到なる 決着への謎の仕掛けか。
目まぐるしく変わる ウェイトレス達。
彼女達は 重要な布石役を演じていた。
短い間に凝縮された 必然の決着済み。
晩年になってから 結実編の謎解きが、
ようやく許されて 大峠の闘いに遭遇。
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東京 第二舞台に登場する七人の彼女。
第三の最終舞台への備えとなる逸話。ついに辿り着いて 最終完結編に至る。
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①、霊の親に似た 障害を持つ彼女。
レジも まともに打てない、少し知恵遅れのウェイトレス。レジの操作が覚えられずに、家族の人からのアドバイスを受けて 工夫して対処していた。ポケットから 自分の電卓を取り出すと、伝票の合計金額を計算して出して、お客様から
支払いのお金を頂いていた。けなげに努力する姿勢には感心した。
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その頃、事業に失敗した兄が、まことの部屋に転がり込んでいた。彼女の事を話すと 関心を持ったのか、急に喫茶店にフラリと現れた。いきなり驚いたが ニヤリと笑って確認して帰った。
彼女は、雰囲気が どこか 伝道師のなお子に似ているところがあった。まだ仕事も覚えていないうちに、「今度、映画を観に行きませんか？。」とまことを誘って来た。まことは、（かおるとの失敗を取り戻す機会かも知れない。若過ぎてしくじった 過去の純粋さを卒業しなきゃ。） と 無理やりに 悪ぶって 承諾した。「うん、いいよ。行こうか。」「うれしい。」と はしゃいだ。
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（もしかして、）と不埒な思いで
仕方なく誘いを受けたものの、映画館の前まで来て、急に気が変わり、二人並んで観客席に座る気がすっかり 失せてしまい、入り口の長椅子に座ったまま、動けなくなってしまった。何が起こったのか
説明がつかなかった。何か え体の知れない 、見えない鎖が降りて来て 体を縛りつけた。声も出せず 全く身動きが出来ない状態に陥っていた。
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「ああ、ごめん‥。」と 声を出すのがやっとだった。彼女も驚いて、しばらくのあい
だ、まことの異常な様子を見て、どうしてよいのか分からず、オロオロしながら、とて
も耐えられない、不可解な沈黙の時間を ただやり過ごすしかなかった。皮肉な事が始まった。
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彼女は、（自分はまことに嫌われたのだ。）と誤解をして思い込んで、店長に告げ口をして
不満をぶつけた。冷たく対応して 女に恥をかかせた まことを
ミソクソに罵り、「ひど過ぎる卑劣な対応は許せない。」と 悪口の限りを皆に吐いて、 罵詈雑言に 罵倒し た。
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その 変な噂話は 忽ち店の全てに広まっていった。「彼女を辱める不器用な男には みんな気をつけてよ。あんなおかしな男には 絶対 近寄らないほうがいい。精神分裂病で、平気で冷たく人を突き放す心は まともじゃないわ。」
一見、おとなしそうに見える彼女だったが、ひとたび怒り出すと
実は 本性は相手を敵と見抜いた時には、容赦無く辛辣な言葉を吐き出す人間だった。 敵に回すと これ程 怖い存在は無い。
まことは 更に「変人扱い」をされて、軽蔑の
白い目に 囲まれてしまった。
「やっぱりこの人はおかしい。まともに関わらないほうがいい。」と まことは、遂に
完全に 孤立化して、人としての評価と信頼感を失ってしまった。
回想。
かつて なおこが、組織の物売りで 高い実績を出して、成功の証を求められて、心情路程を
皆の集まる中で 発表した事があった。その時は 決意して 出発したものの、力が出ない原因を話していた。自分が伝導して入信した若者が 極めて 不真面目な人だった事。
名指しこそしないが、不信仰にしか思えない若い信者が、自分のヤル気を失わせる悪の根源で、私を苦しませている。と みんなの前で「罪人扱い」された時の 「針の筵」を思い出していた。
狭い了けんの人間によって、自分が最低な人間だと評価を下され
て辱められた、居た堪まれない気持ちにされた、昔の 苦い記憶が蘇っていた。どこか なおこに似た処がある。と書いたが、それが一体何なのか？
が今分かった。
イバラの心を持つ獣に、安易に関わってはならない事を教えてくれていた。
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②、社長が 辞めさせた 年上の女。
指を無くした 義肢の姉御肌の彼女。
姉御肌の タイプの 年上のウェイトレスは、どこか
夜のスナックの雰囲気を持った彼女だった。ヘビースモーカーで、いつも接客の合間に、タバコに火をつけて一服する癖があった。お客様が見ているのに、場違いの行動をする不遜なウェイトレスを
社長は 誰かに伝え聞いたのか、見逃さなかった。
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新しく入って来た店長に指示して、「君、彼女に 仕事中はタバコを吸わないように
あなたから 注意をしてやめさせなさい。」と強く警告を出した。
夕方からの出勤予定だった店長は、入ったばかりの立場で、年上の彼女が買い出しに出かけたすぐ後に、まことが一人になった時を選んで ひょっこりと現れて、彼女への「忠告」を伝えた。
「あ、今井さん。ちょっと、お話が。あなたから 彼女に
「仕事中は 絶対にタバコは
吸わないように。」と強く忠告しておいて下さい。これは社長命令だからですね、お願いします。」と
守らせる立場だと強く念を押して伝えた。
「ああ、分かりました。」と承知した。だが
その後、急に団体客が入って来て、一度
に多種類の軽食の注文が来て 一人で接客と厨房をこなすしかない状況になり、目が回るような忙しさに、つい 大事な「事づけ」を彼女に伝えるのを
うっかり 忘れてしまっていた。
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夕方になり、夜の部のメンバーと交代する時間になった。クタクタに疲れていたまことは、帰り支度をして 降りて来た。カウンターの中に入った妙子という新人の子に声をかけた。「あ、タエちゃん 。ちょっと、僕の夜食用にサンドイッチを作ってくれんね。」「あらー！、せこーい！。」と茶化した。
「え‥？。」「まあ‥いいけどー。」と、すかさず ニッコリ笑って すぐにテキパキと
作り出した。「今日はね
、団体のお客さんが いっぺんに入って来てね、忙しくなってさあ、昼からずうーと食事する時間が 全然無かったんだよ。」と疲れた「空腹」の事情を説明して、「せこーい。」と言われて、また、これ以上、イメージを落とす、変な誤解を解く為に、丁寧に言い訳していた。
妙子は、元はこの店によく来ていたお客だった。（ピラフを頼んで 一口目で、「からーい。」と悲鳴を上げてたので、「あ、ごめん。」と、水をついで 謝った事があったなあ…。）と思い出して見ていた。
「はーい、出来たよ。」「お、ありがとう。」 ラップに包んでくれたものを受け取ってポケットに入れた。 帰路の商店街の道を歩く途中、空腹に我慢出来ずに
頬張って食べながら歩いていた。「おー
うまい！。 人が作ったのを食べるのが 断然うまいなあ。」と、噛み締めた。（なせだろう？。）と、タエちゃんの作る手元の様子を思い出しながら 偲んで考えていた。
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その後の展開がどうなったのか？、気がつくと大変な問題に発展していた。
彼女は 社長の警告を無視して
従わなかったとして クビを宣告されてしまっていた。「私は事前に 何も忠告なんて聞いてないわ。」と怒って反論した。
「いきなりクビって、なんて ひどい仕打ちなの？。今夜、彼に言いつけて クビにし
た事を 絶対に撤回させるから覚えてなさいよ。」と彼女は 険しい表情で 脅しの言葉を言い残して帰った。
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店長は（これはヤバいな‥。）と感じて
すぐに社長に報告した。すると 社長は「あなたが 全責任を持って 何とか解決しなさい！。」と指示して 怒鳴りつけ、急いで 帰り支度して 奥さんと二人連れ添って慌てて帰っていった。
店長は、オロオロしながら店に上がって来て、皆に相談した。「今から彼女の夫が 殴り込んでくるかも知れない。どうしたらいいだろうか？。」「え、怖い。」妙子が震えて答えた。「え、僕はもう、すぐにその窓から逃げるよー。」
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「まー、今井さんは 逃げ足が早いんだから。もう。」「ん‥。」「フフ。」まことは
、危うい場面からは
すぐに遠のいた。（店長は
格闘技をやってる、いざという時は
何とかするだろう。あとの始末は 彼に任せよう‥。）と無責任に全てを委ねて、夕闇に姿を眩ませた。
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色んなタイプのウェイトレスが入れ替わっていったが、これには
やはり深い意味が隠されていたようにも思える。
敵が どんな 卑劣な手段で現れようとも、絶対に誘惑に巻き込まれないように、難を避けて
すり抜けて逃れる 知恵の 、見えざる「勝利 パターン」を
第二幕の東京の出逢いの中に さりげなく 盛り込み 仕組まれていたようだった。
あと 他の彼女達の逸話も、その深い意味が見えて来たなら
述べたいと思う。
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③、水商売に慣れる頃に 警告の声。
夜の部の カウンターの指南役の先輩が突然死 した。危なかったまこと。一時は彼を 尊敬してカウンターのプロとしての指南を受けて、色々と学ばせて貰った恩人の師匠だったが、決して学んではいけない、大人の遊びの
汚れた世界に誘惑されて、今にも引き込まれていきそうな予感がしてた時だった。
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彼には、若い美人の奥さんが ちゃんといながら、新人のウェイトレスを 次々と誘惑して、オーナーに隠れて、いかがわしい不埒な行為を、反省もせずに
平然と続けて来た側面があった。
今は閉鎖して 靴箱の物置きになった、3階のソファーは 昼寝や休憩室の場所として開放されていたが、店を閉めてから
秘密の快楽の空間になっていた。
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巧みに誘い込んでは、仲間にも回して共有していたという噂が流れてきた。
先輩が まさかの 悪い遊び人 だった？
まことは、この世なんて きれい事ばかりではなく、いい人と思っていても、所詮 人
間の本性は そんなものかと、現実を受け入れようとしていた。
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その矢先に 先輩に 突然死 が訪れた。ポックリ病とやらで、心臓が停止して、帰らぬ人となってしまった。「不埒な者の
真似をすると そなたも こうなるのざぞ！。」と 天の怒りの声なのか、警告を込めて 強く叱責されたような気がした。何者かによって 体が 重い鎖に縛られて、全く身動きが出来なくなる理由も
暗に 強く教えていた。
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④、兄との葛藤と、人生の逆転劇。
繰り返しの記憶。 夏休みに 同級生の
吉田と海に泳ぎに行った時、後ろからついてきた兄。井原氏とイベント会場に行った時に。ついて来た兄。昔の記憶が重なる、レジャブ感が浮かんだ。
親父が おもちゃの銃を買って来た事があった。 まこと用に買って来た筈だったが、その銃で遊ぶ前に、兄によってバラバラに分解されて
壊されていた。兄が やがて どんな位置に立つようになるのかを 暗示していたような逸話。
兄が、もし 同じ病気で失った恋人の面影を慕って、独身を通してきた弘子と急速に意気投合して、お互いに深い絆と縁を 強く感じて、仲良くなってゆくだろう事は、初めから予想していた。
だから、弘子姉さんの恋人との死別の話は決してしないように決めていた。だが、もしも 兄から頭を下げてきて 「おーい、彼女を 俺に譲ってくれないか？。」と真剣に頼まれたなら、まことは、（仕方なく 弘子姉さんを兄に譲るしかない。そして、代わりに自分は、消えてしまった
かおるさんを追って、探しにいくようになるのかもしれない。）とまで
考えたりもしていた。
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事業に失敗して、弟の部屋に転がり込んできた
という兄の為に、弁当を 毎日持ち帰って、まことに届けるようにしてくれた弘子さんに、恩義を感じて「一言、直接 お礼の言葉を言いたいから、すまんが 俺に一度 逢わせてくれないか？。」と頼まれたなら、会わせるしかないか‥。と覚悟をしていた。
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思想かぶれの弟への 悪口を姉たちに聞かされて まに受けた兄は、散々見下して、両親の前でも、弟の語る言葉にも行動にも いちいちケチをつけて ひどい言葉の暴力で罵倒して、あれだけ
イジメ倒したのに、わずか一年の間に すっかり 形成が 逆転してしまった。
けなされて 離れていった弟の部屋に転がり込んで 世話になって、食事代にも
困り果て、他人の情けの世話になり、何の反省も感謝のお礼の言葉も無く、恩を仇で返すように、仁義にもとる所業で
黙って福岡に帰っていった。
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まことは、（最後ぐらいは キチンとケジメをつけて、いつかは お礼の一言ぐらいは
言ってくれるだろう‥。）と、期待して待つことにした。だが、その後も、反省や
謝罪の言葉も 聞くことが無かった。
兄が帰る時、「お前にやる」と言った中国の文献の分厚い本の事でも、あとになって「返せ。」というので、弘子姉さんにあげてしまった本を、慌てて送って貰うような、あり得ない事が起こってくる。（ああ、兄は やはり、人としての
大事な 心がけが 身に付かないで育ってきたのかも‥。）と 遙か未来の晩年になって ようやく感じていく。
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たとへ 欠点に気がついていても、九つ年上の社交的な兄に、社会に適合出来ない 自閉症の弟が、説教じみた 生意気な事は
とても言い出せなかった。
しばらく兄の様子を見て、東京で起こった
逆転現象を洞察して、どうケジメをつけるのか？を見守る事にした。だが その甲斐もなく 失望だけを残し 散らかし放題のまま
立ち去っていった。
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その後の 第三の舞台となる「福岡」の幕で、東京での距離感が
繰り返されることになっていく。東京で起こった悲劇を どのように感じて、心に深く留めて、いかに反省して 次のステージへの教訓として生かしていくべきか、実は兄は 天から問われていたのだった。
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どうも 兄は
大事な処で チャンスを遠ざけて逃してしまう 不吉な運が付きまとう宿命に置かれている気がする。これも 決められた筋書きであり、悲しき役柄のように
定めなのかも知れない。
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やがて 兄は、福岡の第三の舞台でも、会社が次々と倒産して、独立したばかりの弟の元にやってくる。仕方なく見習いとして手伝って貰うが、急に経営が難しくなり、兄は 一旦、弟と離れて
運送会社に勤める事になる。
業務用の冷凍食品がいつも余るので、姉たちに分け与えたりしていた。その冷凍食品をめぐって、東京の人に
恩を仇で返す、最悪の事態になっていく。
「あれ程 兄弟でお世話になったのに、なんと恩知らずの
無礼な兄弟なのか！。」と呆れられる、最悪な事態になってしまう。まことは、この頃まで
は、まさかの
兄の正体を 全く悟れてなかった。兄の立つ足元は、第一舞台から、第二、第三舞台まで、生前の記憶の全てをを振り返ってみて、どう考えても、「残念」という位置だった。
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