「鏡山の丘」で 孤立。


　昔から、「乞食の神」とか「鼻タレ小僧」という おとぎ話が有る。知らずに関わって 少しでも粗末に扱うと、途端に 運から見放されて 悲劇的な不幸が重なり、転落して 家族がバラバラに崩壊して 遠く離されてゆき、悲しい運命に追いやられてゆく。という 不吉で 残念な 昔話の例えの話 が出てくる 。
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　その試練が、「我が家」に対して「注意するように。」との「警告」として 与えられていたような気がするのは、空想ばかりして生きて来た、私だけが 感じる、「独自の見解」なのだろうか？。
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　兄の不運の「謎解き」で、みんなへの「警告」として起こった出来事だった。と 今頃になって 再認識をしている。さて 果たして何が起こっていたのか？思い起こしながら 検証していきます。
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　兄が中学を卒業して、松下電気に就職してから、何年か経った頃だろうか、急に、「同窓会」の話が出て、久しぶりに、同級の生達と、「どこかで集まって会おう。」という話になった。

　当時は、観光旅行のツアーがブームの時代で、近くの海岸線には、旅行会館や 温泉センターなどが、次々と あちこちに たくさん出来て、家族みんなで遊びにいく人々であふれ、賑やかな時代だった。
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　佐賀県の「虹の松原」という、松林が延々と続く白浜の海岸線を一望に見下ろせる、眺めの良い、「鏡山の丘」に向かって、マイクロバスで登ってゆく、観光ツアーのコースを案内していた。
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　バス会社から一台のバスが迎えに来てくれる。というので、兄の同級生達は、国道の端の近くに 一度 集合して バスの到着を待ち、全員が揃って乗り込むまで、出発を待ってくれていた。
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　兄の「のりお」も、支度して出かけたが、元気が無いまま、用意していた物を忘れていった事に、母が気づいた。 「あら？、信子、あんた。今、バスが国道の橋で待ってるけんね、急いで これを のりおに届けてくれんね。」と、長女の 信子に 荷物を渡して 頼んだ。
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　信子は、荷物を持って 裏口から駆け出した。川の横の道までくると、すぐ近くの 橋の真ん中の蘭館の傍で 、弟のまことが一人で遊んでいる姿に気づいた。その時、ふいに 何かを思いついた。足を止め 振り返って呼んだ。「まことー！。」「えっ？、‥なーに？。」
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　「ちょっと 一緒についてこんね！」と、まことに対して、珍しく優しい声で手招きして 呼びかけた。（ん？、何の用事やろか…？。）と、何も知らずに 走って姉の信子の方に 近づいていった。
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　「これば 渡すように頼まれたけん、一緒に来て。」 姉は、風呂敷の荷物を抱えて言った。「ふーん。なーんだ。一人で行けばー。」「いいから、ほら、ついてきて。」「うーん‥。」強引に誘う姉に、仕方なくついていく事にした。川の横の道を 早足で歩く姉に つられて走ると、国道の橋の近くに、バスの後ろ部分が見えた。バス左側のドア前までくると 突然 歓声が聞こえてきた。
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　見上げると、バスの窓から 兄の同級生の女性たちが 顔を出して声をかけてきた。「あ、のりちゃんの 妹さんと弟さんなの？。わー、かわいいー、ねえ、一緒にいこうよ。さあ、おいでー。」と笑顔で、二人を旅に誘った。
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　姉は、兄が 昨日から 何かで落ち込んでいるのを感じていた。旅行に誘われるのを予期してたのか、荷物を まことの手に渡し、「これを兄貴に渡して。」と バスの中に 上がるように指示して 「ほらっ。」と 弟の背中を 押し出した。
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　まことは、姉の指示通りに バスの中に上がって 兄を探した。一斉に大勢の顔が、まことを見つめていて、内気で人見知りの激しい 少年の心は、たちまち 緊張して 心が萎縮してしまった。
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　笑顔を無くした、兄の顔を見つけると、荷物を渡して すぐにバスを降りようとした。その時、「ねえ、ねえ。一緒に行こうよ。さあ、お姉ちゃんもおいでー。」と 女性が手招きして誘った。だが、姉の信子は 首を横に振り、「いえ、うちは、今日は大事な用事が有るんです。」と キッパリと自分の立場と「意志」を示して、ことわった。
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　「じゃあ、弟さんだけでも、ねえ、一緒にいこう。さあ、ここに座って。」まことは、みんなの誘いに押し切られて、兄の横のイスに座った。（姉も一緒に乗ってくれたら 心強かとに…。）と思って入口を見た。姉は、まことの顔を見て、「あんたは いってこんね。」と言って、入口ドアを閉めるように、と 外から手を振って 別れを告げた。
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　バスの運転手は、姉の意志を確認して ドアをゆっくりと閉めて出発した。

　まことは、一人で 兄の同級生達が 大勢乗ったバスに乗った事を すぐにも 強く後悔していた。兄の表情が なぜか暗く沈んでいるのを感じて、場違いの所に来てしまった。と つくづく悔やんでいた。（兄貴に 何かあったんかな…？。）
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　兄は、なぜか 表情が曇ったまま、一言も「まこと」に 話しかけてこなかった。周りの同級生たちも、兄の様子が いつもと違うので、（弟のほうに 何か問題があるとか？。）と誤解して 詮索したが 心の壁が何なのか 判らないまま、気まずい空気の中で 次第に（詮索せんで 少し 様子ば見よう…。）と、話題を 他に逸らして 静かになった。
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　弟は 人の集まる場所では、うまく話せない「自閉症」で 独特の症状が有ったが、いつもの兄なら さりげなくユーモアで、かばってくれる筈だったが、障害を持つ弟を守る その余裕もすっかり無くしていた。（あれ？兄貴は元気が無か。）とすぐに察した。みんなも（あれ？ 、のりおは いつもとは 違うなあー。なんかあったとか？、おかしかぞ。）と感じ始め、黙ってしまった。
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　本来ならば、無邪気な子供が 加われば 一層 楽しくなる筈の「バス旅行」が、少し「自閉症ぎみ」の おとなしい 少年が 一人参加しただけで、ま逆の 重苦しい旅行に変わってしまった。というのであろうか？。そんな事っ…。
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　まことは せっかくの楽しみにしていた旅行を、気まずい空気にしてしまった 邪魔な自分達兄弟の存在に気づき、みんなに対して、申し訳ない気持ちになった。（こげな事なら 今すぐにバスから おりたい。もし 魔法が使えるなら こんまま 座席から 一瞬で消えてしまいたい。）という 衝動に駆られていた。車窓から見える 白浜と 松原の景色が流れる 沈黙の中で 考えていた。
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　その時、誰かが 傾いた松の幹を見て 「お、あれば見ろ！。」と 大声で 面白い冗談を言って 無理矢理に 話題を変えて逸らした。「こげな 妙な兄弟の事なんか 気にせんで 楽しくいこうや！。」と、みんなへの 励ましの声だった。
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　車内が一斉に、はぐらかしの流れに包まれた。それから先は、まことは 違和感のある子供として、みんなに共有されて 孤立化した。視線をはずされて、誰も話しかけてくれなくなった。
白い目で睨まれ、誤解を浴びていた。何かの 間違いが起きていると感じた。
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　まことは、普通の心とは 違う事は 自分でも 自覚してて 心に刻んでいた。 何が どう違うのか、幼い子供の頭では 到底、人に 説明など 出来なかった。
しかし、（いつか きっと 兄の 暗闇の心の謎も 解いてみせる…。）という「漠然とした課題」を 未来に託して、そっと 心の奥の 棚にしまっておくしか 他に術が無かった。瞑想状態になった。
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　集団の中に混じっても、安易には馴染まずに、決して組織に同化せず、孤立化しても敢えて独自の道を求めてゆく 不思議な訓練を受けていたのだった。
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　周りの人から、どんなに誤解されようが 嫌われようが 平然として 寡黙を続けていく、大胆不敵な側面があった。 この 一見 淋し過ぎる 不器用な 生き方を、生涯続けていく事になっていく。
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　人から受けた恩を、ズタズタに切ってでも 貫くべき みちが 示されているなら、裏切ることもやむを得ず、進んで挑むようになってしまう 非情の道…。
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この世で 大切とされる 義理人情の世界の価値観とは異なる、まことだけに 特別に与えられた 特殊な使命だった。
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　そして、この世間の常識をめぐって やがて未来に起きる、「我が家」に託された使命を果たしていく時に、兄と弟との ゆくべき方向と価値観の違いに、明暗を分ける 大悲劇が起こる事になる。
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　これは、歳を重ね、晩年になってから、若い頃に起こった 不可解な記憶を振り返って、ようやく見えて来る、天からの采配という、我々への 大切な 「警告」であった。と 気づいていく。

　（前編。） おわり。　　つづく。

惜別の旅。　　　１、　前編。

おわり。

英霊の嘆きを背負った少年は、ポチの悲哀を再現していく。　
幼い記憶の全ては、やがて辿る、未来の宿命への暗示だった。





　
「ポチよ、　泣かないで。」

　１、少年編。 　一部分紹介。

この物語は、弟の「まこと」の少年期の記憶
をもとに、想定した、フィクション小説です。

　昭和二十九年、犬の地形の前足にあたる小さな海岸沿いの村に、「信。（まこと）」という男の子が生まれた。

　「まこと」は物心がつくようになると、兄の私（のりお）のあとを追って、ヨチヨチと歩くようになった。

　私は、九歳年下のそんな弟が可愛くなって、（いい遊び相手になるぞ…。）と思い始めていた。　

　やがて、「まこと」が、六歳になった時、彼の未来を暗闇に引きずっていくきっかけとなる、ある不思議な事件が起こった。

　その日は足元から底冷えする寒い朝だった。

　「のりおー！。」

　母親のチカが、妹の授業参観に行く為に、着物に着替えてから、二階に上がって来た。

　… 省略。　

　「のりおー！、母さんは出かけるけんね。あと頼んだよー。」

　試験勉強中だった、のりおは、机に向かったままの姿勢で、生返事をした

　「うーん。」

　チカが襖の前でふと振り返ると末っ子の「まこと」が、祖母のゼンのタンスの前にポツンと座っていた

　（あら…？。）

　「まこと」の様子がおかしいのに気がついて、チカはしばらく見つめた。

　… 省略。

　
　「まこと」は、膝を抱いて丸くなり、寒さに耐えながら、ブルブルと小刻みに震え、歯をガチガチと音を立てていた。

　「おかしかねー…。ほら、のりお、ちょっと見なさい。「まこと」が、寒がっとるから。」

のりおは、勉強を中断して机から離れて、襖の横から「まこと」の震える姿を見た。

　「おっ。」

　「あんた、火をおこして、コタツ を入れてあげなさい。」

　「う…ん、うん。」

　チカは、のりおに細かく指示して頼むと、妹のかつえの授業参観にすぐ出かけていった。
　

　「「まこと」ー、ちょっと待ってろよ。」「う…ん。」

　のりおは、早速、押入れの前に敷布団を敷き、その上に瓦コタツ を静かに置いた。炭火をおこすために、いそいそと階段を降りていった。　

　… 省略。

　やがて、のりおは瓦コタツの中央に、赤い炭火を丁寧に移すと、上から掛布団をかけた。

　「よーし！、出来たぞー、さあ、「まこと」ー。　はいれ！。」

　「まこと」は、暖かい布団に滑りこむように潜り込むと、すぐ安らかな表情になった。　

　それを見届けたのりおも、すっかり安心して、襖を閉めて、隣の自分の部屋で再び勉強を始めた。

　… 省略。

　…省略。

　誰かに見られているような気配がして、「まこと」は、ふと左の、とこのまに顔を向けた。

　そこには台の上に立てかけてあった遺影写真が見つめていた。１６歳で志願して満州に出征した兵隊姿の叔父の(よしき)と目が合った。

　（ん…？、なんだろう…？。）

　その意思を探ろうと、しばらく兵士の目を見つめていたが、突然胸をかきむしりたくなるような激しい、むな騒ぎに襲われた。

　険しい茨（イバラ）のような霊に支配された時、写真の兵士がフワッと動いたような気がした。　

　「まこと」は恐ろしくなり、咄嗟に目を背けて布団をかぶった。

　炭火の入った瓦コタツを強く抱いて丸まり、恐怖の思いを必死に忘れようとした。　

　闇の中にくすぶる赤い炭火を見つめながら、ただ心臓だけ
が、「ドキン。ドキン…。」と、はや鳴りに脈打っていた。

　…省略。

　もはや誰の助けを呼ぶこともできず、あきらめてじっと耐えていたが、次第に意識が薄れていった。

　「まこと」は不思議な息苦しさの中で、いつしか心地よい深い眠りの世界に入っていった。

　…省略。

　… 省略。

　

予告編。

つづく…。

　「ポチよ、泣かないで。」

１、少年編。一部紹介。おわり

大切な内容と思われたら投票を。

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　　　小説。　「ポチよ　泣かないで。」

　　　詳細は、こちら。　忠霊塔。


　 　　もくじ。　 ポチよ。　 光の道。





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ごあんない。 少年の未来を暗示する出会い。「まこと」を襲う暗闇と光の、「放浪の旅」が小説のテーマです。 幼い頃の記憶の封印。障害を負った帰還兵の父親と、娘が残した、日本人の課題を尋ねる旅。

英霊の嘆きを背負った少年は、ポチの悲哀を再現していく。幼い記憶は、やがて辿るであろう、未来の光と闇との、明暗を、分ける宿命の暗示であった…。 　 英霊のポチは、ウスに変身して、宝を生み出す 訓練場に「まこと」を導く「闇の声」を演じていく。

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この場面は、特になぞとき講座でも引用し解説して
ゆく、閃きを生む、重要な記憶の、回想シーンです。
引用場面には、謎解きの手がかりが潜んでおり…、
小説の七編全体を通して読んで頂けば、閃きます。

全ての謎は、　本講座　で見えてきます。

「まこと」の脳を包む、靄を吹き散らす風が吹く時は、
いつ、来るのかは…本編で。　　全巻はフォームから。

なぞとき小説。 「ポチよ、泣かないで。」

小説　「ポチよ　泣かないで。」 　　詳細は、こちら。　　忠霊塔。 　 　もくじ。　　 ポチよ。　 光の道。 参考。 予告編。 つづく…。 　「ポチよ、泣かないで。」 　１、少年編。一部紹介。つづく。 --------------------------