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はじめに。 あらすじ。
f 、 悔しい思い出。
シマの脳裏に、母の姿が甦って来る度、悲しみがこみ上げてくる程、心が痛くなる、哀れな別の思い出があった。
出来町に部屋を借りて住んでいた頃、母が具合を悪くして寝込んでしまっていた時、しばらく収入の道が閉ざされて、家賃が何ヶ月も払えないで、大家さんにお願いして待って貰う事にした。だが、いくら待って貰っても、家賃を払える状態ではなかった。
しばらくして、母のハシが病気で寝込んでいるのに、突然、大家さんがやってきて、「家賃が払えないのであれば、今すぐ出ていってくれ！。」と、有無を言わせず、いきなり家財道具を道路に放り出されてしまった。
おまけに、母が寝ている畳まで剥ぎ取られて、その家を追い出されてしまった。
あの時、家賃を払えない自分達が悪いのだから、確かに追い出されても、何も文句の言えない身分だったが、神も仏もいない、「地獄」に叩き落とされたような、その悔しさは、ただただ情けなくて、どうしようもない、怒りと惨めさで、泣くにも泣けない、たとえようもないほどのものだった。
父の話。
妹のチカや元子も、やがて働くようになった。だが、病気の母と、目の見えない父を支えてゆくにも、収入が少なくて、なかなか、すぐには生活は楽にならなかった。
シマだけではなく、チカや兄弟達、みんなの青春は苦労の思い出ばかりだった。
父の、甚七は、頑固な人ではあったが、シマたちに話をする時は、一本、筋が通っていて、いつも人間として大切なものを教えていた。
甚七の話を聞いているその時は、（うるさいな…。）と思って聞いていたが、シマが何か窮地に陥ってしまった時、父の言葉を参考にして、いろいろと思い出しては、心構えをしていった。
だが、「年頃の美しい娘がいるのに、もったいない！。」と、貧しい生活をしている様子につけ込んで、「身売りの誘いの話」を持って近づいてくる者もあったが、目の悪い父は、娘たちの「女として大切なもの。」を守り通そうと心を砕いた。
父の一つ一つ語る言葉が、田口家の「家訓」だった。父は光を失ったからこそ、独りで幾たびも自分の運命を呪ったり、（不幸な身の上の、自分の宿命が一体何なのか？。）何度も、暗闇の中で訊ね求めていたに違いない。
「光を見る為の「象徴」の目を失い、そして、光について証をする「実体」を失っても、どんなに辛くとも、貫き通さなければならない。」という、「田口家に負わされた道。が何であるのか？。」 父の、甚七は、その後、何となく悟っていったのかも知れない。
その後、シマも妹のチカも、「どんなに貧乏に陥っても、決して身を落とす事なく、どうにか貞操の道を乗り越えていく事が出来たのも、父が居てくれたおかげだ。」と感謝するのだった。
父は、娘たちをちゃんと無事に嫁がせるまで、生きながら闇の中で見守ってくれた。
その後、孫の話を聞きながら六十八歳の時、静かに息を引き取った。
天命をまっとうするほどの高齢ではなかったが、何とか孫の顔を見る事が出来るまで生きてくれた。
ここまで生き長らえる事が出来て、本当に良かった。それは、兄弟姉妹たちみんなが、心をひとつにして父を支えてきたからだった。
②、闘争編の予告。
一代目の甚七の残した「光の道を備えよ！。」という「家訓」は、二代目の二人の姉妹により、引き継がれていく。
その後、シマは想像を絶する苦労をしながら（甚七の妹の立場で、）共に甚七の「過ち」を贖ない償っていくようになる。
そして、一方、妹のチカは、糸島の地に嫁いで、父の無くした「光りの道」を備える為の、激しい闘いをしていくようになる。
残された人生。
長い長い年月が流れ、シマもチカも、お婆さんになっていった。
妹や弟たちが大きくなり、みんなそれぞれ独立して所帯を持ち、子供を産んで育てるようになった。やがて、その子供たちが独立して一人前になってゆく時、シマはもう八十四歳を越えて、すっかり老人の仲間入りになっていた。
七十四歳を越えた妹のチカも、今まで様々な問題にぶつかる度に、十歳上である姉のシマに、いろいろと相談を訊ね求めていた。その嫁いでいった先の「糸島」で、チカにふりかかってくる問題の解決のために、シマは先駆けて体験し苦労しながら掴んできたものを、「助言」として与えていた。
チカは自分の抱えている問題が、姉のシマの体験による「示唆と助言」によって、ことごとく解決していく事が不思議だった。
そしてチカが、姉のシマと共に、襲いかかってくる、あらゆる試練に勝利し、乗り越えていった時、今までの重苦しい天幕が、裂けて落ちるように、全ての悩みから開放されていき、楽しげに趣味に生きれるようになっていた。
チカも、日本舞踊、造花。三味線、大正琴、民謡。など、自分の好きな趣味に打ち込み、時間を費やす事が出来る余裕がやっと出来たのだ。
この二人の姉妹は、与えられた役どころを、ことごとく演じ果たしたのだった。
残り少ない人生を思い残す事なく、精一杯、楽しく過ごすようになった。苦労があっただけに、趣味にも力が入り、喜びもひとしお大きかった。
あとがき。
シマが八十一歳になった時、これまで生きて来た過去を振り返り、記憶を頼りに書き残した「自叙伝の冊子」があった。
この物語は、それをもとに書いた「ノン、フィクション小説」である。
シマが八十四歳になった時、（犬年の、梅の咲く３月14日だった。）
甥である私、「田口 まこと」がひどい風邪を引いて寝込んでいた時、もうろうとしていた頭の中に、何故か伯母のシマの顔が浮かんだ。
「何なんだろう？。」と、気にかかり、フラフラしながら訪ねていった。
ぼんやりした意識の中で、いろいろと話をしている時だった。伯母は私の話を聞きながら、急に思いついたかのように、引き出しから出して見せてくれた物が、この「小冊子」だった。
途中まで、伯母自身が解説しながら、指で行を辿りながら、読んで聞かせてくれていたが、急に何か思い出したのか、溢れる涙で読めなくなり、代わりに私が声を出してゆっくり読んでいった。
その時、私は、この伯母の辿って来た人生の中に、何かが隠されている事を直感した。そして、伯母が大切に持っていた、二冊の「小冊子」を預かってきた。
それを受け取って読みやすいように小説風にまとめていったものが、「遠路の果てに。」という小説である。
まことが、伯母のシマから受け取った「小冊子」は、「田口家がどんな運命を辿ってきたのか、詳しく知らない弟や妹たちの為に、どうしても書き残しておかなければならない！。」という、何か使命感のようなものに追いつめられるようにして、書き残そうとしたものであった。
シマ伯母さんが、これまで一年ほどの時間をかけて、怪我の後遺症で自由に動かなくなった右手首を震わせながらも、記憶の許す限り、忠実に書き残そうとしたものであった。
シマは、それを何度も読みながら、幾たびも涙を流したに違いない。
ある時は、幼心に戻って、今は亡き（父の甚七や母のハシ）の隠された気持ちを再発見したり、過去の自分に出逢いながら、涙を流しながらノートに書き綴っていったものであった。
そして、私、（田口
まこと）も、その「小冊子」を小説風にまとめていくに当たって、涙を流しながら、次々と「隠されていた新たな謎。」を解く、手がかりを掴んでいったのだった。
そして、シマの歩んで来た道は、まことがこれからたった一人で成そうとする行動に、更なる確信と裏付けを与える結果に成った。
まことの心情は、「田口家」の暗い過去の歴史の中に、吸い込まれ、さまよっていった。そして、シマの背負ってきた苦労の心情を、受け継いで、構想が一つに溶け合っていった。
最後に、シマは八十歳になるまでの自分の人生を振り返って、辞世の句を残している。
生まれしも、 独り死するも、
独りの人生は、 孤独。
山下シマ。
さいごに。
シマの生きてきた人生は、軍国主義時代から、戦後復興時代。そしてバブル崩壊の時代までの、目まぐるしく変る、「激動の時代」を生きて、実に多くの悲惨な人間の運命を見てきた。その苦労だらけの人生に、一体どんな意味が隠されていたのだろうか？。
シマは、自分のこれまでの人生をまとめて、すでに「死の準備」を整え始めていた。
あとは、（この「小冊子」に肉付けし、全体的に意味のある作品としてまとめてくれる人がいないだろうか？。）と、ある誰かを待っていた。
シマは、自分の書いた「自叙伝」を、「尼になった「瀬戸内寂鐘」さんにお願いしよう。」と、彼女の住所まで控えていた。
だが、そんな時、甥のまことが突然、目の前に現われた。まことの話す「身の上話」の中に、シマは、説明出来ない、ある不思議な「共通性」を感じた時、急に立ち上がり、タンスから「紙の袋」を取り出した。
（甥っ子の「まこと」には、私の「自叙伝」を理解出来るかも知れない。）そして、（私の願いを叶えてくれるのは、ひょっとしたら、訪ねてきてくれた「まこと」かも知れない？。）と、急に閃いて、引き出しから取り出して、読んでくれたのではないだろうか？。
苦労と孤独の中に、いつも生きて来たシマ伯母さんは、甥の「まこと」が歩いている宿命の道は、何故か過去に自分が歩いてきた、暗くも「懐かしい道」のような、不思議な「共通性」を感じ始めていた。
伯母のシマは、思想や宗教に惑わされる息子の「まこと」を心配して、何かと相談してくる、妹のチカに、「まことは、あれは、宿命の道たい。」と答えていた。
「まこと」の頭の中は、既に通過すべき暗黒の路程は、すべて通過していた。そして、「最後の封印」を解くにふさわしい、「大局的思考」が完成しつつあった。
だが、（最後のものが、一体何であるのか？。）が、どうしても解けなかったが、それは、突然、思いがけないところから現われた。
それは最後に、自らの正体に目覚める「日本民族」を象徴する「まこと」が、光を求めながら、さまよい、苦労の歴史を歩んできた「世界的選民」である「イスラエル民族」を象徴する「田口家とシマ」が見いだす歴史的宿命の出逢いを表わしていたのだ。
「日本民族」が、「正しい主人」を見つけて、長い眠りから目覚め、日本古来の姿に生まれ変っていく時、世界の国々に、「流浪の民」となった「第一イスラエル」は、「日本」という国の存在の意味を知って、次第に自分達が立てるべきであった（実体の神殿）を迎える為の備え、「光りの道を備える。」という使命を発見し目覚めていく。
その日の為に、先駆けて先行し勝利していく「ひな型の役割」をする、二つの立場が、天にはどうしても必要であった。
ここに来て、ただ訳も判らず苦労と孤独の道を辿ってきた「シマの人生」の中に、また「田口家の歴史」の中に、「神の選民」として立てられた、ある「民族」が辿って来た、四千年の歴史の「全ての内容」が含まれていた事に、「まこと」は気がついたのであった。
この、「選民と皇国」を表わす二人がそれぞれが立たされていた、「宿命の道」を誰が想像しえたであろうか。
イエスの語られた「たとえ話」は、終わりの日に、「日本」のおとぎ話の「たとえ話」の意味を解明すると同時に、その隠された「聖書の謎」が明らかにされ、完全に成就するように計画された。
やがて、その「おとぎ話の謎」を解く者が現われた時、「聖書の封印された奥義」も、同時に完全に解かれていくようになる。
そして、その使命を持って現われる存在を待ちこがれ、かくも長く暗く辛い道を歩んでこなければならなかった「選民の立場」を、三代で再現する「天の供え物」が必要であった。
その悲し過ぎるほどの「田口家の歴史」の中に、見えざる天の摂理と意図が隠されていたのだ。
シマは、生きてこの事を確認する、最も恵まれた「栄光の女性」として選ばれたのであった。
全ての訓練は、当座は、喜ばしいものとは思われず、むしろ悲しいものと思われる。しかし、後になれば、それによって鍛えられる者に、平安な義の実を結ばせるようになる。
ヘブル人への手紙十二／十一
勝利を得る者には、隠されてい るマナと、白い石を与えよう。
ヨハネの黙示録、二／十七
小 説。
「光の道を備えよ！。」 壱、、暗黒編。 f 、終わり。
弐、闘争編。
（チカ定着編。）に
乞う、ご期待！。
つづく・・・。
光の道を備えよ！。
壱、暗黒編。
一部分紹介。
a。
b。
c。
d。
e。
f。 |
